機械学習やディープラーニング、データサイエンスといったキーワードを昨今ではよく聞きます。
これらに興味のある方にとって、「独学で習得したいが、どのような環境を準備するのがいいのか分からない」といった状況はあるかと思います。クラウド環境を活用してもいいのですが、従量課金制であったりといった面で資金面が気になることは多いでしょう。
そこで、個人PCでじっくり腰を据えて学びたいといった方のために、状況に応じて何を選択するのがベターかこのページにまとめます。
PCスペックの概要
おおよそ以下の内容をスタンダードとし、予算やこだわりで調整します。詳細については後述します。
- CPU
Intel・AMDのどちらでも問題ありません。可能な範囲で高スペックなものを選択する形となります。
- ビデオカード
NVIDIAのGPUが搭載されたものをおすすめします。(理由は後述のライブラリ「CuPy」のところで説明します)数種類ありますが、比較的高額でかつそれぞれの金額差が大きいため、予算枠を決めた後一番最初に決めるのが良いです。
- メモリ
最低限16GB、なるべく32GB以上は確保しておきたいです。
- 電源ユニット
選択するビデオカードによりますが、最低ラインとして700W以上を想定しておくのがよいです。
既に所有しているデスクトップPCを強化して利用したい
パーツのみ交換する形で予算を抑えたいといった場合、強化ポイントは「ビデオカード」「電源ユニット」「メモリ」「CPU」の優先度順で検討するのが良いです。
- ビデオカード
今利用しているビデオカードがNVIDIAのGPU以外のものであったり、内蔵チップセットのまま利用しているといった場合は、強化対象として考えるのが良いです。
機械学習・データサイエンスの分野において、プログラミング言語として「Python」を使うことが多いのはよく知られています。Pythonでの数値計算には「NumPy」や「CuPy」というライブラリを使います。Python・CuPyを活用して機械学習やデータサイエンスを行うことを優先するため、NVIDIAのGPUが搭載されたビデオカードを選択します。AMDのビデオカードやMacのM1チップで処理が高速と謳われているものもありますが、気にしなくてよいです。
【CuPyについて】
CuPyとは、数値演算を行うPythonライブラリ「NumPy」をGPU上で処理するようにカスタマイズされたライブラリです。NumPyとの互換性が意識されており、基本的にはCPUかGPUかを区別せずにほぼ同一のコードで実装できるのが特徴です。
もともとCUDAのライブラリ(ならびにCUDAコア)を必要とするなど、NVIDIAのGPUを利用する想定で開発され、AMDのGPUへの対応はv7.0(2019年)まで待つこととなりました。このような背景から、CuPyのライブラリ開発は、基本的にNVIDIAのGPUへの対応が優先される可能性が高いと考えています。(AppleのM1チップには未対応)これが、ビデオカードの選択肢としてNVIDIAのGPUをおすすめする大きな理由です。ちなみに2020年12月現在でRTXシリーズへ搭載されている「Tensorコア」の活用・対応はありませんが、将来的に対応することでより高速演算への恩恵が得られる可能性はあると考えられます。
CUDAコア数等、ビデオカードの性能比較が必要な場合は、以下のページも参考にしてください。
- 電源ユニット
ビデオカードで何を利用するかによって、電源ユニットの容量を考慮する必要があります。ビデオカードによっては700W以上を最低ラインとし、もしこれ以下であれば強化することとなります。
- メモリ
Windows10であればOSの快適動作として推奨されるだけでも8GBは必要となります。また、機械学習やデータサイエンスで演算処理を行う際に利用するライブラリの多くは、メモリ消費が大きいです。このため現時点でメモリ搭載量が8GBや16GBであれば、16GBからできれば32GB以上に強化します。ちなみに管理人のPC環境では32GBのメモリを利用していますが、それでも高負荷時には空きメモリ容量が1GB以下になったりします。
- CPU
どのようなプログラム処理等を実行するかにもよりますが、高負荷な演算処理はビデオカード側で処理をすることも多いです。CPU自体が他のパーツ以上に選択肢が多いという点からも、他のパーツと比較して柔軟に考えてよいです。ここは予算都合に合わせて、可能な範囲で高スペックなものを選択します。
以上からイメージとしては、「ゲーミングPCのようなPCを意識しつつ、メモリ容量を多めに確保する」と捉えると良いかと思います。
ビデオカードの候補
「GTX1660 SUPER」から選択するならば、以下をおすすめします。デュアルファンのビデオカードです。ただ、その製品もHDMIポートが1つしか無いようなので、モニターをこれまでHDMI接続2画面で利用していたユーザーにとっては、所有しているモニターがDisplayPortを備えているかどうか注意が必要です。
ちなみにHDMIポートとDisplayPortそれぞれ接続して2画面表示とした場合、音声出力が一方の画面のみとなったり、設定の変更が必要だったりするケースがあるようです。2画面接続を前提として購入する際には、ビデオカードの仕様を確認しておきましょう。
「GTX1660Ti」から選択するならば、以下をおすすめします。複数台のディスプレイをHDMI接続したい場合はこのビデオカードになります。HDMIポートが2つあるのは、ASUSから発売されているこの1製品のみです(2020年12月07日時点)。ファンが1つだけであることから、ファンがより回ることによる静音性の課題があるかもしれませんが、それを補うだけのメリットだと思います。
「RTX3060Ti」から選択するならば、以下をおすすめします。「デュアルファンモデル」「HDMIポートが2つ(HDMI 2.1)」「占有スロット(厚み)が2つまで」を全て満たすのは、GIGABYTEから発売されているこの1製品のみです(2020年12月07日時点)。この製品であれば、処理スペック面のみならず汎用性が高い仕様となっていることで、より長期間にわたり活用できるかと思います。
なお、先日発売となった「RTX3060」について書きますと、2021年4月時点ではRTX3060Tiよりもコストパフォーマンス面でほとんど優位性がありません。パーツ単体で購入できるまで我慢して待つ場合は、RTX3060ではなくRTX3060Tiを選択するのがおすすめといえます。
ちなみにRTX3060Tiの場合、スロット占有数の一例としてGigaByte製:2、ASUS製:2.7、MSI製:2.5など、「製品によっては厚みが3スロット分」であったりします。ビデオカード購入時には、事前に利用しているPCの空きスロット数を確認しておきましょう。排熱効率を考えると、3スロット空きがあると安心です。
電源ユニットの候補
ビデオカードを交換することで、電源容量不足となる可能性がかなり高いです(RTX3060TiだけでTDP200Wあります)。特にRTXシリーズへの変更する際、もし現時点で500W〜600W程度の電源ユニットを利用しているのであれば、700W以上の電源ユニットも合わせて購入し交換しましょう。「80 PLUS Platinum認証」「10年間交換保証」のオウルテック製品が品質とコストパフォーマンスの両面でおすすめです。
メモリの候補
DDR4-2666あるいはDDR4-3200が主流です(2021年3月現在)。32GB(16MB-2枚組)に強化するならばそれぞれ以下をおすすめします。ヒートシンク付きで熱対策します。
一からPCを購入する
以下のような状況の方は、おそらくPC単体を購入することになります。
- 所持しているPCが例えば5年以上前といった、古いスペックとなっている
- そもそもデスクトップPCを所有していない
このような場合、いわゆる「自作PC」としてPCパーツを全て選別して揃えても良いのですが、組み立てそのものにはあまり興味が無いといった場合には、「BTOでの購入」をおすすめします。
ここでは「パソコン工房」「Sycom(サイコム)」の2つを紹介します。
まず、「パソコン工房」はある程度のカスタマイズが可能で、かつコストパフォーマンスに優れています。いくつかのBTO用の組み上げパターンを基準とし、スペックアップのための追加カスタマイズが可能なラインナップとなっています。
調べたところでは、「RTX3060Ti」「Ryzen7」搭載の下記モデルが非常にコストパフォーマンスが良いです。ミニタワーとミドルタワーでそれぞれ紹介してします。カスタマイズ時に、メモリが32GBとなるように選択しましょう。また、電源ユニットは効率が良い「80PLUS GOLD認証」を選択すると良いです。
パソコンの選び方とお勧めパソコンをご紹介!「パソコン購入相談」パソコン工房
次に、「Sycom(サイコム)」(以降サイコムと記載)は、BTOの中で特にカスタマイズ製に優れています。いわば「ユーザの組み立て作業代行」にきわめて近いと考えて良いです。
「大半のパーツ選択時にメーカー・型番指定が可能」な点が素晴らしいです。
2021/04/03時点で、市場では一部のビデオカードが非常に品薄となっています。ですが、サイコムでは一部メーカーのRTX3060Ti等が選択可能な状況のようです。BTOモデルとして購入することで、品薄GPU搭載のビデオカードを入手できる可能性があります。早期に購入を希望する人はお店に確認してみましょう。
また、「OS無しを指定した際、他社BTOよりも値引き額が大きい」事も、隠れたメリットです。他社では5,000円程度であることが多いですが、サイコムでは19,000円程度もの値引きがされます。
このため例えば
- 既にWindows10の空きライセンスがあるのでそれを利用する想定である
- Linuxのみを利用するため、OSは不要
といった方は、特に注目です。
他に良い面として、ケーブルの引き回しが非常に綺麗ですっきりしています。パーツ交換時にケーブル類をまとめるのは面倒な点が多く、自身で対応するとなると扱いが乱雑になりがちなので、この点は有り難いです。
ちなみに「価格が割高」という声が稀にありますが、他社と違い「金額は税込表記に統一されている」ことによる印象度合いが大きく、選択肢次第ではむしろ割安になることもあります。
以上の利点が大きい方は、サイコムのBTOをおすすめします。
サイコムでおすすめは、静音モデルです。水冷、簡易水冷タイプよりもメンテナンスが容易で空冷能力にも優れています。
- ビデオカード:RTX-3060Ti
- 電源ユニット:750W GOLD認証
- メモリ:32GB(16GB-2枚組)
- SSD:M.2 SSD 512GB
- OS:なし
あたりを選択した場合、CPU次第で税込18万円台〜22万円台くらいになります。
なお、IntelCPUのモデル「Silent-Master NEO Z490」(ATXモデル)ならびに「Silent-Master NEO Z490 Mini」(Micro-ATXモデル)の方が、AMDCPUのモデル「Silent-Master NEO B550A」(ATXモデル)ならびに「Silent-Master NEO B550A Mini」(Micro-ATXモデル)よりも若干高価となっています。
ビデオカード在庫状況調査
(2021/04/04 22:30時点)パソコン工房ではまだRTX3060を搭載したBTOの在庫があるようです。
例えばミニタワーモデル【LEVEL-M0B5-R73X-RBXH】であれば、CPUがRyzen7、メモリ32GB(16GB✕2)のモデルで18万円台(税込)となっており、コストパフォーマンスを重視する人は選択肢に入れて良いと思います。
補足
最後に、管理人のPC環境(2018年12月購入)を参考までに記載しておきます。管理人の場合、優先度は「メモリ容量」→「ビデオカード」→「CPU」→「SSD容量」の順で検討しました。電源ユニットは750Wです。OSはUbuntuを使用しています。CPUは当時の予算都合等によりCore-i5を選択しましたが、現時点(2021年4月)で選ぶならばAMDのCPU(Ryzen5・Ryzen7・Ryzen9)を候補にします。(その他別途、ノートPCでWindowsやMacOSを利用しています)
- CPU:Core i5-9600K
- ビデオカード:RTX2080
- メモリ:32GB
- SSD:M.2 SSD タイプ(速度を優先)